「矯正治療の費用は医療費控除の対象になるの?」「確定申告すればどのくらい戻ってくる?」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?
矯正治療は治療目的で行われる場合、確定申告をすることで税金の一部が還付される可能性があります。 しかし、美容目的の矯正は対象外になるなど、適用条件があるため、正しく理解して申請することが重要です。
本記事では、矯正費用の医療費控除の対象範囲・申請手続き・戻る金額の計算方法について、医師と税理士の監修のもと詳しく解説 します。
「矯正を考えているけど、費用負担が心配…」という方も、この記事を読めば適正な税金還付を受ける方法がわかり、納得した上で矯正を始めることができます!
監修医師

歯科医師 末光妙子
日本大学松戸歯学部付属病院勤務後、一般歯科医院に勤務。虫歯の診療を続ける中で、大切な歯を守るためには予防歯科の普及と、より気軽に歯医者に通うことができる環境が必要と考え、ホワイトニング専門医師として活動を始める。2011年、虫歯予防の効果も得られるホワイトニングの普及のため、専門医院ミュゼホワイトニングの立ち上げに携わった。
- 著書
- 『小顔音読~歯科医師が教える、魔法の早口ことば』
- 活動
- 歯科医院向けホワイトニング知識/技術研修の講師・大手企業での口元セミナー・地球こどもサミットや子どもお口電話相談等イベント出演など・8020運動をテーマとした予防歯科イベントの開催・歯科衛生士の接遇スキル・審美歯科の技術向上を目的とした歯科衛生士学校との教育提携・歯科フリーペーパー『FEEDNOTE』で歯科衛生士活躍をテーマにした執筆活動・オーラルケアアイテムの企画/開発/販売 他
※本記事の医師監修に関して、医師が具体的な商品や施術を推奨しているわけではございません。学術部分のみの監修となっております。
監修税理士

税理士法人池上会計/代表税理士 池上 和弘(税理士登録番号127196)
専門分野:確定申告 / 医療費控除 / 個人・法人税務 / 事業資金調達
矯正治療にかかる費用は、条件によって医療費控除の対象となります。確定申告で税金が還付される可能性があるため、正しい知識を持つことが重要です。本記事では、矯正費用の控除の仕組みや手続きの流れをわかりやすく解説しました。
矯正費用は医療費控除の対象?適用条件を解説
矯正治療は「見た目を整えるための美容矯正」と「歯並びや噛み合わせを改善する治療矯正」に分かれますが、医療費控除の対象になるのは後者の治療目的の矯正です。
医療費控除は治療目的のみ
- 矯正費用は、治療目的であれば確定申告で税金の一部が還付される可能性があります。
- ただし、美容目的の矯正は対象外になるため、適用条件をしっかり理解しておくことが重要です。
医療費控除の対象になるケース
以下のような矯正治療は医療費控除の対象になります。
- 子どもの健全な成長を妨げる要因の改善を目的とした矯正(小児矯正)
- 顎変形症など、医学的に必要と判断される矯正
- 歯列の乱れが原因で発音障害や咀嚼(そしゃく)障害を引き起こしている場合の矯正
- 「噛み合わせが悪く、食事がしにくい」「顎の痛みがある」などの症状がある場合 → 治療目的と判断されやすい。
- 「矯正をしないと顎のズレが進行する可能性がある」と診断された場合 → 治療目的となり控除対象になる可能性が高い。
- 「子どもの歯並びが成長に影響する」と医師が判断した場合 → 小児矯正として控除の対象に。
医療費控除の対象外になるケース
以下のような場合、医療費控除の対象外となる可能性が高いです。
- 見た目を良くするためだけの審美目的の矯正(例:歯並びが気になるから治したい)
- ホワイトニングやセラミック矯正などの美容医療
- 審美的な理由のみでのクリニック独自の矯正プラン(美容矯正)
- 「笑ったときに歯並びが気になるから矯正したい」 → 審美目的で控除対象外
- 「見た目をよくしたいのでホワイトニングも一緒にやりたい」 → ホワイトニングは控除対象外
医療費控除を受けるためのポイント
- 確定申告の際に、医師から「治療目的であることの証明」をもらうとスムーズ!
- 医療費控除を受けるには、領収書が必要なので必ず保管しておくこと!
- 一括払いだけでなく、分割払いでも控除の対象になる(支払った年に計上)
- 矯正治療の目的を明確にし、医療費控除の対象になるか事前に確認することが大切!
- 治療目的であることが証明できれば、還付金として税金が戻ってくる可能性がある!
矯正費用の医療費控除で戻ってくる金額の計算方法
矯正治療の費用が医療費控除の対象になった場合、どのくらいの金額が還付されるのか気になりますよね?
確定申告を行うことで、所得税の一部が戻ってくる可能性があります!
計算方法を理解すれば、自分がどれくらい還付されるのか事前にシミュレーションできます。
ここでは、医療費控除の計算方法や、実際にどれくらい戻るのかをわかりやすく解説します。
医療費控除の計算式
年間の医療費が10万円を超えた分が控除対象となります。
(年間の医療費 − 10万円)× 所得税率 = 還付金額
- 10万円未満の医療費は控除対象になりません。(総所得が200万円未満の場合は「所得の5%を超えた分」が控除対象)
- 医療費控除の対象になるのは申請する本人と、生計を共にする家族の分も含まれるため、家族全体の医療費を合算可能!
- 控除額が多いほど、還付金が増える!
矯正費用100万円のケースで還付額をシミュレーション
所得税率 | 矯正費用(100万円) | 控除額(100万円−10万円) | 還付金額 | 翌年度の住民税減額金額 |
---|---|---|---|---|
5%(年収300万円程度) | 100万円 | 90万円 | 4万5,000円 | 9万円 |
10%(年収400万円程度) | 100万円 | 90万円 | 9万円 | 9万円 |
20%(年収600万円程度) | 100万円 | 90万円 | 18万円 | 9万円 |
23%(年収800万円程度) | 100万円 | 90万円 | 20万7,000円 | 9万円 |
- 所得税率が高いほど、還付される金額が大きくなる!
- 年収300万円なら約4.5万円、年収800万円なら約20.7万円が還付される!
- 家族の医療費も合算できるため、より多くの控除を受けられる可能性あり!
医療費控除を最大限活用するポイント
家族全員の医療費を合算する!
- 自分だけでなく、生計を共にする家族の医療費も対象になる。
- 両親や配偶者、子どもの治療費と合算すると、控除額が増えて還付金も増える!
支払った年にまとめて申請する!
- 医療費控除は「支払った年」に適用されるため、年をまたいで申請はできない。
- 分割払いでも、その年に支払った額だけを計上できる!
保険適用外の医療費も対象になる!
- 矯正費用だけでなく、通院費(交通費)・治療に必要な薬代も含めることが可能!
- ただし、美容目的の矯正やホワイトニングは控除対象外なので注意!
- 矯正治療の費用(医師が治療目的と判断した場合)
- 矯正に伴う診察・検査費用
- 矯正治療のための通院交通費(電車・バス・タクシー代)
矯正費用の確定申告の手続き|必要書類と申請の流れ
矯正費用の医療費控除を受けるためには、正しい手続きを踏み、必要な書類を準備することが重要です。
- 「どの書類を準備すればいいの?」
- 「確定申告はどうやって行えばいいの?」
- 「申請をスムーズに進めるためのポイントは?」
ここでは、確定申告の手続き方法と注意点をわかりやすく解説します。
医療費控除を受けるために必要な書類
確定申告時に準備すべき書類
書類名 | 必要な理由 | 入手先 |
---|---|---|
矯正治療の領収書 | 治療費の支払いを証明するため | 矯正治療を受けたクリニック |
医師の診断書(必要に応じて) | 治療目的の矯正であることを証明するため | クリニック(必要な場合のみ) |
医療費控除の明細書 | 申請する医療費の内訳を記載する | 国税庁の確定申告ページからダウンロード |
源泉徴収票(給与所得者の場合) | 所得税の計算に必要 | 勤務先 |
マイナンバーカード or 免許証 | 確定申告時の本人確認のため | マイナンバー発行機関・市役所 |
- 診断書は必須ではないが、治療目的の矯正であることの証明になるため、取得を推奨!
- 領収書は5年間保管する必要があるので、確定申告後も捨てずに保存しておくこと。
▶ 「医療費控除の書類をダウンロード」詳しくはこちら → 国税庁サイト
確定申告の方法(e-Tax & 郵送)

当記事の監修税理士事務所が解説している確定申告のやり方の動画です。こちらもぜひご覧ください。
確定申告は、以下の2つの方法で申請できます。
- 国税庁の公式サイトから電子申告が可能
- 自宅で手続きできるので、税務署へ行く手間が省ける
- 還付金の振り込みが郵送よりも早い(約3週間)
- 必要書類を印刷し、最寄りの税務署へ郵送する
- 還付金の振り込みは通常1〜2ヶ月程度かかる
- 確定申告の締切日(毎年3月15日)までに税務署必着
- e-Taxはマイナンバーカードが必要なので、事前に準備しておくこと。
- 郵送の場合、提出期限ギリギリにならないように早めに準備するのがベスト!
▶ 「e-Taxでの確定申告方法」詳しくはこちら → e-Tax公式サイト
医療費控除をスムーズに申請するポイント
家族全員の医療費を合算する!
- 生計を共にする家族の医療費は、まとめて申請できる
- 両親・配偶者・子どもの医療費を合算すると控除額が増え、還付金も増える!
支払った年にまとめて申請する!
- 医療費控除は「支払った年」のみ適用されるため、翌年に持ち越せない。
- 分割払いの場合、その年に支払った分だけが対象になるので注意!
通院交通費も控除の対象!
- 通院のための交通費(電車・バス・タクシー代)も申請できる
- 家族の付き添いでかかった交通費も含めることが可能
- ただし、自家用車のガソリン代や駐車料金は控除対象外
チェックリスト(申請前に確認!)
- 医療費控除の明細書に記載ミスがないか?
- 領収書・診断書を準備したか?
- 申請期限(3月15日)に間に合うように準備できているか?
矯正費用の医療費控除に関するよくある質問(FAQ)
矯正治療の費用について、「これは控除の対象になる?」「申請の際に何が必要?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
ここでは、よくある質問をまとめ、分かりやすく解説します。
- 保険適用の矯正治療はある?
-
基本的に、矯正治療は自由診療のため健康保険は適用されません。
ただし、以下のような場合は例外的に保険適用となります。保険適用となるケース- 先天的な顎変形症(顎変位症・受け口など)
- 外科的手術が必要な重度の噛み合わせ異常
- 厚生労働省が定める特定疾患(唇顎口蓋裂など)に伴う矯正治療
ポイント- 機能的に問題のない歯並びの矯正は保険適用外。
- 保険適用になるかどうかは、歯科医師に相談するのがベスト。
- クレジットカード払い・分割払いでも控除対象になる?
-
支払った年に一括計上すれば控除の対象になります!
ポイント- クレジットカード払いの場合 → カード会社に支払った時点(請求書の日付)で控除対象になる。
- 分割払いの場合 → その年に支払った分のみ医療費控除の対象。
- 医療ローンの場合 → 毎月の支払い額ではなく、「実際に支払った金額」を確定申告で申請する。
- こどもの矯正も医療費控除の対象?
-
子どもの矯正治療は、医療費控除の対象になることが多いです!
控除の対象になるケース- 噛み合わせや顎の成長に影響を与える場合(小児矯正)
- 発音や咀嚼に問題がある場合、治療目的と判断されることが多い
対象外になるケース- 「将来的に歯並びが悪くなる可能性がある」だけでは対象にならない場合も
- 見た目を良くするためだけの矯正は控除対象外
- 医療費控除を申請する際の注意点は?
-
確定申告の際に、以下の点に注意しましょう。
注意点チェックリスト- 領収書を必ず保管 → 申請時に必要(5年間保管が必要)
- 診断書は必須ではないが、治療目的の証明になるため取得推奨
- 家族全員の医療費を合算できるため、忘れずに計算する
- 確定申告の期限は毎年3月15日。
- 過去の確定申告の医療費控除のし忘れや記入漏れを修正する場合、その年の申告期限から5年まで遡れる
事前に医療費控除の対象になるか確認し、必要なものは保存しておこう!
矯正治療の費用が医療費控除の対象になるかどうかを事前に確認し、確定申告に必要な書類をしっかり準備しておくことが重要です。
- 事前に医師に確認し、「治療目的の矯正」であることを明確にしておく!
- 診断書や領収書は必ず保管し、確定申告の際にスムーズに提出できるようにする!
- 支払方法に関わらず、実際に支払った年に控除申請を行う!
- 矯正治療が医療費控除の対象になるか、歯科医に確認したか?
- 治療の領収書を保管しているか?(支払った年に申請するため必須)
- 付き添いも含め通院のための交通費(電車・バス・タクシー)の領収書を保管しているか?
- 診断書を取得し、確定申告の際に提出できる準備ができているか?
- 家族の医療費と合算し、控除額を最大限活用しているか?
- 確定申告の締切(3月15日)を忘れずに申請できるようスケジュールを組んでいるか?