【歯科医師監修】歯石と歯垢は何が違うの?歯科医院での歯石取りの頻度や費用も解説
歯科医院でやるほうがよいとされる理由とは
2022-09-27
監修:医療法人財団匡仁会理事長 - 末光妙子
目次
前歯の裏側や歯と歯の間などに歯石ができて、気になっている方もいるのではないでしょうか。しかし、歯垢との違いやどのようにして歯石ができるかを知らないと、予防や対策が取りにくいものです。
今回は、歯石と歯垢の違いと歯石ができる仕組みを解説し、歯石取りの必要性もお伝えします。さらに、歯石取りを歯科医院でしてもらう場合の費用や頻度も解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
歯石(しせき)と歯垢(しこう)の違いを知ろう
はじめに、本記事の1つ目のテーマとなる、歯石と歯垢の違いについて解説していきます。
歯垢とは
歯垢は「プラーク」とも呼ばれ、唾液では流されなかった細菌が歯の表面にネバネバと付着・増殖したもののこと。1mgあたりに1億個の細菌がいるとされ、いわば「細菌の塊」です。
歯と歯茎の境目や歯と歯の間、奥歯などにできやすく、虫歯の原因になるため、早めに除去しなければなりません。
歯石とは
歯石とは、歯垢が固まって石灰化したものです。歯の表面に付いた歯垢に、唾液内のカルシウムやリン酸などのミネラルが結び付き、石のように硬くなって定着します。いわゆる「細菌の化石」のようなもので、一度できてしまうと歯磨きでは取れません。
表面がザラザラと荒れているので、その上にまた細菌が付着・増殖しやすく、その菌が歯周病や口臭などの原因になりやすいです。
普段歯ブラシが当たっていないところにできるため、自分では見えにくかったり、手が届きにくかったりします。そのうえ歯石はかなり硬いため、無理やり取ろうとすると思わぬ怪我につながることもあるので、定期的に歯科医院で除去してもらうのが一番です。
歯石はどれくらいの期間でできる?
歯石が形成されるまでの期間はどれくらいなのでしょうか。歯垢(プラーク)はできてから2日~2週間で硬くなり始め、その後固まって石灰化するといわれています。個人差があるため、歯石を取る頻度は人によって異なります。
歯石の種類
歯石には、できる場所によって2つの種類があります。それぞれ特徴とともに解説します。
歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)
歯肉縁上歯石とは、歯茎より上にできる歯石のことです。比較的やわらかく、白や黄みがかった色をしています。唾液内に含まれるリン酸カルシウムが付着してできるとされ、下の前歯の裏や上の前歯の外など、歯肉のライン上にできることが多い歯石です。
歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)
歯肉縁下歯石は、歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)にできる歯石です。黒褐色でとても硬く、除去しにくいのが特徴です。
さらに、歯周ポケット内に隠れていて見えにくく、ひそかに歯周病が進行している可能性があり、炎症を起こしている場合は痛みが出ることもあります。
歯石をそのままにしておくとどうなる?
ここからは、歯石を放置すると何がよくないのか、歯石が引き起こすリスクについてさらに詳しく解説します。
虫歯や歯周病の原因に
歯石をそのままにしておくと、虫歯や歯周病になる可能性があります。なぜなら、歯石の表面はザラザラしていて歯垢(プラーク)が付着しやすく、虫歯菌が増えやすいからです。虫歯菌が増殖すると、エナメル質や象牙質が侵食され、溶かされてしまいます。
また、歯と歯茎の間や歯周ポケットに歯石ができると、歯周病菌が住み着いて繁殖しやすくなります。歯石自体には歯周病を引き起こす要因はありません。しかし、歯石周辺に繁殖した歯周病菌が歯茎に感染すると、歯周病を発症します。
口臭につながる可能性がある
歯石は口臭の原因にもなります。歯石の表面には凹凸があるため、食べカスなどの汚れや細菌が溜まりやすく、溜まった汚れが口臭のもとになるガスを発し、臭いにつながります。
また、歯周病は進行すると膿が出る場合があり、そこから臭いが発生して口臭につながることもあります。
見た目に悪影響
歯石ができると、見た目にも影響が出ることがあります。特に、歯肉縁下歯石は歯石に血が混じりやすく、黒っぽく見えることがあり目立ちやすくなります。さらに、歯周病が進むことによって歯肉がぶよぶよとした状態になるため、見た目への影響は大きくなります。
一方、歯肉縁上歯石は白っぽくて見た目はわかりにくいですが、細菌が繁殖しやすいため、直接においの原因になりやすいと言えます。
歯石は自分で除去できる?
歯石の恐ろしさを知ると、そのままにしておくことは危険だと感じるのではないでしょうか。歯石ができてしまったら放置せず、適切な方法で除去することが大切です。
歯石は硬いため、普段使う歯ブラシや歯間ブラシでは取ることができません。また、本人からは見えにくい場所や手が届きにくいところにできるので、自分で歯石を取るのは困難です。
インターネットやSNSなどで、爪やつまようじなどの硬いものを使って自分で取り除く方法が紹介されていることもありますが、健康な歯の部分まで削れたり歯茎を傷つけたりする可能性もあるためおすすめできません。
歯石取り(スケーリング)は歯科医院でやってもらうのがベスト
前章でお伝えしたように、歯石を自分で取るのは困難かつリスクが高いため、歯石は歯科医院で取り除いてもらうのが最善の方法と言えます。
歯科医院で行う歯石取りは、歯科用語で「スケーリング」といいます。専用の器具を使って丁寧に歯石を除去していきます。口腔内を健康な状態に保つためにも、定期的な歯石取りをおすすめいたします。
スケーリングとは
スケーリングとは、主に「スケーラー」という金属製の細長い器具を使用し、先端についた刃を歯の表面にこすりつけて歯石を削り取る方法です。
歯石は、スケーラーを使って歯科医師や歯科衛生士が力を入れて削ることでやっと取れるほど硬いものです。金属器具ではなく、超音波の力で歯石を落とす方法もあり、医院や歯石の状態によっては併用される場合もあります。
市販されているスケーラーには要注意!
歯科医院で歯石取りのために使われるスケーラーは、ドラッグストアやインターネットで一般の方向けに販売されています。しかし、前述したように専門知識や技術のない一般人が自力で歯石取りをするのはリスクが高く、キレイに歯石を除去することは困難です。
歯石取りは、知識と技術を持つ歯科医師や歯科衛生士にお任せすることがおすすめです。
歯石取りの適切な頻度は?
歯石取りはどれくらいの頻度で通えばいいのでしょうか。目安としては、3ヶ月に1回程度、溜まりやすいと感じる人は1ヶ月に1回程度、歯科医院の定期検診のときにしてもらうのもおすすめです。
歯石取りの費用の目安
歯石取りの費用の目安として、通常のスケーリングは、保険を適用させる場合は虫歯や歯周病の検査とセットになりますが、3,000円~3,500円前後です。
なお、さらに専門的な口腔内全体のクリーニング(PMTC)をしてもらう場合、保険適用外で10,000円前後かかる場合もあります。
歯周病の治療として行う場合
歯周病治療の場合は、単に歯石取りだけをするのではなく、歯のクリーニングやブラッシング指導など、さまざまな治療を組み合わせて行うことになるため、歯石取り単体での費用としては算出できません。
歯石を取った後の疑問・不安
「歯石を取ったら何だか歯がしみる」「歯茎が下がった・・・」という話を聞くこともありますが、心配ありません。
歯石を取ったことで今まで歯石にカバーされていた部分が露出されるため、知覚過敏のような症状が出たり、歯石を取ることで歯茎の腫れが引き締まり歯茎が下がったように見えるのです。
そのほかに重度の歯周病の方ですと、歯同士をくっつけていた歯石が取れ、歯が動くようになることもあります。
それならば歯石を取らない方が良いと考える方もいるかもしれませんが、本来の原因は歯石に起因するところなので、まずは歯石を取る必要があります。その上でそれぞれの症状に合わせた処置を行うことが大切です。
虫歯や歯周病、口臭などの原因になる歯石ですが、普段のケアと定期的なプロのチェックで予防できますので、しっかりケアしていきましょう。
適切に歯石を除去して良好な口腔状態を保とう
歯石とは、細菌の塊である歯垢が硬くなったもので、放置すると虫歯・歯周病・口臭などにつながる可能性があることがわかりました。できてしまうと自分では除去しづらいため、適切なタイミングで歯科医院に通い、歯石取りをしてもらうことをおすすめします。
定期的な歯石取りでケアをして、口腔内を清潔な状態に保ちましょう。
監修歯科医師
医療法人財団匡仁会 理事長・歯科医師 末光妙子 日本大学松戸歯学部付属病院勤務後、一般歯科医院に勤務。虫歯の診療を続ける中で、大切な歯を守るためには予防歯科の普及と、より気軽に歯医者に通うことができる環境が必要と考え、ホワイトニング専門医師として活動を始める。2011年、虫歯予防の効果も得られるホワイトニングの普及のため、専門医院ミュゼホワイトニングの立ち上げに携わり、現在は同歯科医院を運営する医療法人の理事長を務める。
- 所属
- 医療法人財団匡仁会(恵比寿駅前デンタルクリニック・池袋駅前デンタルクリニック)
- 著書
- 『小顔音読~歯科医師が教える、魔法の早口ことば』
- 活動
- 歯科医院向けホワイトニング知識/技術研修の講師・大手企業での口元セミナー・地球こどもサミットや子どもお口電話相談等イベント出演など・8020運動をテーマとした予防歯科イベントの開催・歯科衛生士の接遇スキル・審美歯科の技術向上を目的とした歯科衛生士学校との教育提携・歯科フリーペーパー『FEEDNOTE』で歯科衛生士活躍をテーマにした執筆活動・オーラルケアアイテムの企画/開発/販売 他
お役立ち歯科コラム 記事一覧
- 歯のホワイトニング(種類・特徴・料金など)わかりやすく徹底解説
- セルフホワイトニングと歯科医院の施術の違いって?
- 歯の着色汚れを除去するには?
- ホワイトニングで後悔するって本当?
- 歯の本来の色って何?
- 歯がグレー・縞模様になるテトラサイクリン歯
- 歯にできるシミ「ホワイトスポットとブラウンスポット」とは
- 神経の治療をした歯の「変色」って?
- ホームホワイトニングの費用対効果
- ホワイトニング⻭磨き粉の効果
- セルフホワイトニングの効果は?歯科医院との違いやメリット・デメリットも紹介
- 歯のホワイトニングとはどんなもの?方法や回数・期間・料金の目安を紹介
- オフィスホワイトニングとは?メリット・デメリットを徹底解説
- 自宅でできるホワイトニングとは?種類と特徴を解説
- 歯を白くするにはどうすればいい?6つの方法を紹介
- ホワイトニングの値段を知りたい!料金相場はどれくらい?
- ホワイトニングの効果が得られる回数・期間は?
- 歯の黄ばみはなぜ起きる?
- 歯列矯正中にホワイトニングをすることは可能?
- ホワイトニング施術はしない方がいい?
- よく聞く「プラーク(歯垢)」って何のこと?
- 歯石って何?予防法や取るタイミング
- 冷たいもので歯がしみる原因
- 歯の「被せ物」保険治療or自費治療
- 歯周病とは?基礎知識と予防・治療方法を身につけよう
- 国民皆歯科健診とはどんな制度?
- 健康寿命を伸ばす秘訣は口元にアリ!ホワイトニングがもたらす健康効果