【歯科医師監修】舌苔(ぜったい)は細菌だらけ!予防・ケア方法とは?
口臭の原因となる舌苔の主な原因も紹介
2022-09-27
監修:医療法人財団匡仁会理事長 - 末光妙子
目次
舌の上に白いものが溜まっており、気になるという方は多いのではないでしょうか。この白いものは「舌苔(ぜったい)」といい、うっすらと白い程度が正常な状態です。しかし、白すぎる状態はあまりよくありません。
今回は、舌苔についての基礎知識、予防やケアの方法を説明いたします。正常な状態を知り、清潔に保ちましょう。
舌苔(ぜったい)は細菌が溜まったもの
舌苔とは、舌の表面の細かい突起(舌乳頭/ぜつにゅうとう)の部分に口の中の細菌が溜まって苔のように見えるもののことです。細菌・食べ物のカス・口内の皮膚垢・粘膜などが付着して堆積した結果できていきます。
色は黄白色や灰白色をしていることが多いですが、口にしたものによっては別の色に変わることもあり、口を開けたときに気になる場合もあります。
舌苔の主な原因
では、舌苔はなぜ発生してしまうのか、原因をチェックしてみましょう。
舌の清掃が足りない
歯の汚れと同様に、舌も清掃しないと食べカスや細菌が溜まりっぱなしになります。放置せず適切に汚れを落とすことが大切です。舌の詳しい清掃方法(舌苔の落とし方)は後ほど解説します。
唾液が出にくい・少ない
唾液には、細菌や汚れを流し、細菌を増やさないようにする働きがあります。病気やストレス、食習慣などによって唾液の分泌が少なくなると、舌の表面の汚れが落ちにくくなり、舌苔もできやすくなってしまいます。
口呼吸による乾燥
鼻呼吸をせずに口呼吸が多くなると、唾液が乾いて循環も悪くなり、口の中が乾燥して舌苔が発生しやすくなります。そのため、口呼吸の習慣がついている人は鼻呼吸を心がけることがおすすめです。また、鼻炎などにより口呼吸をしている人は、耳鼻科を受診して早めに改善しましょう。
舌の位置や筋力
舌の汚れは上顎との摩擦である程度落ちますが、舌の位置が低い(受け口など)もしくは舌の筋力が低い人は、舌と上顎がくっつく機会が少ないため舌苔が溜まりやすいといわれています。
舌の筋力を鍛えることで舌苔の改善だけでなく、口呼吸や口臭、いびきの改善や小顔効果もあるため、少しずつトレーニングしていきましょう!
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薬の影響
ステロイドや抗生物質を長期間服用していると、口の中の常在菌の種類が変わり、「黒毛舌(こくもうぜつ)」という黒い舌苔が付着する場合があります。
舌苔は口臭の原因の1つ
口臭の主な原因物質は、口の中に多くいる細菌が作り出す「VSC(揮発性硫黄化合物)」です。VSCは舌の上でたくさん作られるため、口臭の原因のうち約6割が舌苔であるとされています。つまり、舌苔をきちんとケアしていれば、多くの場合口臭も改善されるのです。
舌苔はがんの原因にもなる!?
最近では口臭予防として舌の汚れのケアをする方が多いですが、実はにおいだけでなく、がんの予防にもなっている可能性があるとの報告がありました。
舌の表面にできる白い汚れ「舌苔」が多い人は、口や喉のがんの原因になるとされる「アセトアルデヒド」の呼気中の濃度が高いということが岡山大学と北海道大学の研究グループによって判明しました。舌苔を取り除くとアセトアルデヒドの濃度が下がることも確認しており、舌をきれいにすることが、がん予防につながる可能性があるとも報告されています。
岡山大学HP:https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id280.html
アセトアルデヒドというと、二日酔いの原因や大気汚染原因物質というイメージもありますが、口の中の細菌が糖を代謝するときにも産生されます。
高濃度のものはもちろんですが、低濃度のもの(生理的な範囲内)でも長時間お口の中に存在する場合、とどめることは有害と考えられています。
舌苔を落とすにはどうすればいい?
舌苔はそのままにせず適度に落とすことが好ましいですが、うがい程度では落とすことができません。舌の正常な状態を知り、ケア方法を学びましょう。
舌が健康なときの状態
舌の表面をよく見てみると、じゅうたんのように細かい突起が密集しています。この突起は舌乳頭といい、食べ物を舐め取りやすくしたり、味や感覚を感じたりする重要な器官です。
舌乳頭は4種類あり、このうちの糸状乳頭というものが大半を占めていて、この糸状乳頭が舌苔の発生に深くかかわっています。糸状乳頭は表面が角化していて、脱落した上皮細胞や食べカス、分泌物などが糸状乳頭の間に溜まり、口の中の細菌が繁殖し舌苔ができあがります。
健康状態が良好だとしても上皮の入れ替わりなどは起きるので、舌の表面にうっすらと舌苔があり、薄く白く見えるのが正常な状態です。
刺激しすぎはNG|起床時のみでOK
「この薄い白いのが気になる!!」と舌苔を過剰に除去しようとする方もいますが、これはまったくの逆効果になります。舌に刺激を与えすぎると糸状乳頭の角化が進み、糸状乳頭が長くなることで、舌苔が溜まりやすくなってしまいます。
しかし、一度角化が進んでしまっても、しばらくのあいだ過度の刺激を避けていれば、また元の角化具合まで落ち着いてきますのでご安心ください。
通常、舌表面の汚れは唾液によって洗い流されたり、食べ物や上顎などとこすれることによって清潔に保たれていますが、食事の制限をしたり唾液が減ってくると汚れが溜まり、舌苔が厚くなってしまいます。
このため、舌苔ケアのタイミングとしては、《長時間食事をしていない・唾液の分泌が少ない》起床時が望ましいと言えます。
歯ブラシで舌をこするのもNG!
歯磨きついでに歯ブラシで舌を磨く方もいますが、歯磨き粉に研磨剤が含まれていると舌を傷つけ、それがにおいの原因になることもあります。
また、歯磨き粉をつけていなくても歯ブラシでの清掃は避けたほうがいいでしょう。舌の表面は舌乳頭というものがびっしりとあり、広げると約20平方メートル、畳でいうと約12畳分ほどの面積になります。12畳分もの細菌などを歯ブラシで取った後は、水で洗い流したとしても相当な数の細菌が歯ブラシに残っています。
医療用の器具のようにしっかり滅菌・乾燥できれば良いですが、家庭内で歯ブラシについた細菌をすべて取り除くことは不可能です。そのため、歯ブラシ上で細菌が繁殖し、そのブラシでまた歯を磨くと、増殖した菌を口の中に戻すことになってしまいます。
舌を清掃するなら、舌を上顎とこすり付けてみる、しっかり洗浄できて乾燥しやすい舌専用の器具を選んで使用するという方法がおすすめです。次項で詳しい舌苔ケアについてお伝えします。
舌苔の正しいケア方法
1日1回、朝起きて歯磨きをするときに、舌クリーナーで舌苔を取り除きます。ヘラ状のもので、一方向に掻き出すタイプがおすすめです。鏡で舌苔の場所を確認しながら、奥から手前に向けて3~4回動かしてみてください。
上述の通り、ブラシ状の舌クリーナーは、舌を傷つける恐れがあることと、ブラシ内で細菌が繁殖しやすいため推奨しません。
また、舌クリーナーがない場合などには、はちみつを舐めて舌苔を浮き上がらせるのもよい方法です。
力を入れすぎない
舌はやわらかくデリケートな場所です。ゴシゴシと強くこすると舌の表面が傷ついてしまいます。赤くなったり出血したりする場合もあるため、力を入れすぎず優しく動かしましょう。
無理に1回で落とし切ろうとしなくてよい
これまで舌を磨く習慣がなかった人など、舌苔が蓄積されて厚くなっていると、1回では落としづらい場合もあります。しかし、毎日清掃をすることで少しずつキレイになっていくので、舌を傷つけないためにも無理に落とし切らなくてかまいません。
「おえっ」となるときは舌を思い切り前に出す
口の奥にものが入ると、「嘔吐反射」といって「おえっ」となる人もいます。嘔吐反射を避けるには、舌を思い切り前に出すのがおすすめです。
清掃以外の舌苔の予防・対策
つづいて、清掃以外に舌苔を防ぐにはどんな方法があるのかご紹介します。
マウスウォッシュ(洗口液)
マウスウォッシュには、口の中の汚れや食べカスを洗い流したり、殺菌したりする作用があります。刺激が強すぎると口の中が荒れることがあり、アルコール配合のものは口の中が乾燥しやすくなるため、ノンアルコールで低刺激のものをおすすめします。
なお、マウスウォッシュは過剰に使用すると口の中に必要な細菌まで減ることがあるため、使いすぎには注意が必要です。
乾燥を防ぐ
舌苔を防ぐには、口呼吸を改善する、加湿器・保湿剤を使う、マスクを着けるなどして、口の中の乾燥を防ぐことも大切です。
口呼吸がなぜよくないのかは、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はあわせてご覧ください。
舌苔による二次被害
口臭の原因や、がんを引き起こす可能性については前述しました。それ以外にも、舌苔によって影響が出る恐れのあるものを例示します。
味覚障害
舌の表面には味を感じる「味蕾(みらい)」という組織が多く存在します。舌苔が厚くなって味蕾を覆ってしまうことにより、食べ物の味を感じにくくなり、おいしく食べられなくなることがあります。
誤嚥性(ごえんせい)肺炎
食べ物や唾液とともに細菌が誤って肺や気道に入り込むと、誤嚥性肺炎を起こす可能性があります。これは、嚥下機能障害のために唾液や食べ物、胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引することによって発症する肺炎です。舌苔が増殖したりのどの付近に溜まっていたりすると、誤って飲み込んでしまいやすくなります。
特に、病気で嚥下力が弱っている人や高齢者、小さい子どもは注意が必要です。
舌苔を除去して清潔な口内を保とう
舌苔は舌の上に細菌が溜まったもので、口臭の原因になったり、味覚障害や誤嚥性肺炎などを引き起こしたりすることもあります。適切に舌磨きをする、乾燥を防ぐなどのケアをして舌苔を抑え、口内をキレイで清潔感のある状態に保ちましょう。
監修歯科医師
医療法人財団匡仁会 理事長・歯科医師 末光妙子 日本大学松戸歯学部付属病院勤務後、一般歯科医院に勤務。虫歯の診療を続ける中で、大切な歯を守るためには予防歯科の普及と、より気軽に歯医者に通うことができる環境が必要と考え、ホワイトニング専門医師として活動を始める。2011年、虫歯予防の効果も得られるホワイトニングの普及のため、専門医院ミュゼホワイトニングの立ち上げに携わり、現在は同歯科医院を運営する医療法人の理事長を務める。
- 所属
- 医療法人財団匡仁会(恵比寿駅前デンタルクリニック・池袋駅前デンタルクリニック)
- 著書
- 『小顔音読~歯科医師が教える、魔法の早口ことば』
- 活動
- 歯科医院向けホワイトニング知識/技術研修の講師・大手企業での口元セミナー・地球こどもサミットや子どもお口電話相談等イベント出演など・8020運動をテーマとした予防歯科イベントの開催・歯科衛生士の接遇スキル・審美歯科の技術向上を目的とした歯科衛生士学校との教育提携・歯科フリーペーパー『FEEDNOTE』で歯科衛生士活躍をテーマにした執筆活動・オーラルケアアイテムの企画/開発/販売 他
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